管理職が育たない会社の特徴とは?プレイヤーからマネージャーへ変わるために必要なこと
「仕事ができる社員を管理職にしたのに、部下が育たない」
「管理職になっても、いつまでも自分で仕事を抱え込んでいる」
「部下から管理職への不満が出ている」
「次の管理職候補がなかなか育たない」
このような悩みを抱えている経営者は少なくありません。
特に中小企業では、営業成績が良い、技術力が高い、仕事が早いといった理由から、優秀な社員を管理職へ昇進させるケースが多くあります。
ところが、「優秀なプレイヤー=優秀なマネージャー」とは限りません。
むしろ、これまで自分自身が成果を出すことで評価されてきた人ほど、管理職になった後も自分で仕事を抱え込み、部下を育てることに苦労する場合があります。
問題は、その人に管理職としての能力がないことではありません。
多くの場合、会社側が、「管理職とは何をする人なのか」を明確にしないまま、役職だけを与えてしまっていることに原因があります。
今回は、管理職が育たない会社に共通する特徴と、プレイヤーからマネージャーへ成長するために必要な考え方について、ドラッカーのマネジメント思想も踏まえながら考えていきます。
1.なぜ「仕事ができる人」を管理職にしてもうまくいかないのか
営業担当者であれば、自分の営業成績を上げる。
技術者であれば、高い品質の仕事をする。
店舗スタッフであれば、お客様に良いサービスを提供する。
プレイヤーの成果は、比較的分かりやすいものです。
ところが、管理職になると成果の出し方が大きく変わります。
管理職の役割は、自分一人で成果を出すことではありません。
部下やチームを通じて、組織として成果を生み出すことが求められます。
つまり、
プレイヤー「自分が成果を出す」から、マネージャー「人を通じて成果を生み出す」
への転換が必要になります。
ところが会社側がこの違いを十分に教えないまま、「今日から課長だから頑張ってくれ」と役職だけを与えてしまうことがあります。
これでは本人も、何を変えればよいのか分かりません。
その結果、管理職になってからも以前と同じように自分で仕事を抱え続けてしまうのです。
2.管理職が育たない会社に共通する5つの特徴
では、管理職がなかなか育たない会社には、どのような特徴があるのでしょうか。
代表的な5つの原因を見ていきましょう。
特徴1 管理職の役割が明確になっていない
最も大きな問題は、
「管理職は何をする人なのか」
が社内で定義されていないことです。
例えば、
- 売上をつくる
- 部下を育成する
- チームの目標を管理する
- 業務改善を行う
- 経営方針を現場へ伝える
- 現場の課題を経営層へ伝える
など、管理職にはさまざまな役割があります。
ところが、これらを明確にしないまま、
「課長なんだから、それくらい分かるだろう」
としてしまう会社があります。
管理職本人からすると、何をもって評価されるのか分かりません。
結果として、自分が最も得意だった「現場の仕事」に戻ってしまいます。
管理職を育てる第一歩は、管理職に求める役割と成果を明確にすることです。
特徴2 プレイヤーとしての成果だけを評価している
管理職になった後も、
「本人の売上」
「本人の契約件数」
「本人の作業量」
ばかりを評価していないでしょうか。
もちろん、管理職自身が一定の実務を担当することはあります。
特に中小企業では、プレイングマネージャーとして働くケースも多いでしょう。
しかし、本人の数字だけを評価していると、管理職は部下を育てるよりも、自分で仕事をした方が評価されるようになります。
本来見るべきなのは、
- チーム全体の成果
- 部下の成長
- 業務改善
- 情報共有
- 人材の定着
- 次のリーダーの育成
などです。
評価するものが変わらなければ、行動も変わりません。
管理職に求める成果と評価制度を一致させることが重要です。
特徴3 「仕事を任せる」ことができない
優秀なプレイヤーほど、
「自分でやった方が早い」
と考えがちです。
実際、その通りかもしれません。
10分で終わる仕事を部下に説明すると30分かかる。
任せた仕事を確認すると間違っている。
結局、自分でやり直す。
このような経験を繰り返すと、
「もう自分でやった方がいい」
となってしまいます。
しかし、それを続けている限り、部下は育ちません。
管理職自身もいつまでも忙しいままです。
管理職に必要なのは、
「今日の仕事を早く終わらせること」だけではなく、「半年後、1年後に組織として仕事ができる状態をつくること」
です。
仕事を任せることは、単なる業務分担ではありません。
人材育成そのものなのです。
特徴4 管理職への教育を行っていない
一般社員には新人研修を行うのに、管理職になった瞬間から教育がなくなる会社があります。
しかし、本来は逆かもしれません。
管理職になると、
- 目標設定
- 部下育成
- 面談
- 評価
- 問題解決
- 会議運営
- コミュニケーション
- 経営方針の理解
- チームマネジメント
など、それまでとは異なる能力が必要になります。
これらは、役職を与えただけで突然身につくものではありません。
管理職研修を一度実施して終わりにするのではなく、
学ぶ → 実践する → 振り返る → 改善する
というサイクルをつくる必要があります。
管理職育成は「研修」というイベントではなく、継続的な仕組みとして考えることが大切です。
特徴5 経営者自身がすべて決めている
管理職を育てたいと言いながら、最終的には経営者がすべて判断している。
これは中小企業で起こりやすい問題です。
例えば管理職が何かを提案しても、
「それは違う」
「こうした方がいい」
「私ならこうする」
と経営者がすぐに答えを出してしまう。
これを繰り返していると、管理職は次第に、
「自分で考えても、どうせ社長が決める」
と思うようになります。
そして、
「社長、どうしたらいいですか?」
と何でも確認するようになります。
経営者からすると、
「うちの管理職は自分で考えない」
と感じるでしょう。
しかし、もしかすると、
自分で考えなくてもよい組織を、経営者自身がつくってしまっている
のかもしれません。
管理職を育てるためには、経営者自身も「任せる」ことを学ぶ必要があります。
3.プレイヤーとマネージャーでは「成果」の意味が違う
管理職育成で非常に重要なのが、
「成果とは何か」
を理解することです。
プレイヤーの場合、
自分が10件契約する。
自分が100個製造する。
自分が10人のお客様を担当する。
このように、自分自身の仕事が成果につながります。
一方、マネージャーの場合は違います。
例えば5人の部下がいるなら、
5人それぞれの強みを活かし、チーム全体として成果を出す。
こちらが重要になります。
極端に言えば、
管理職本人が最も忙しい組織が、必ずしも良い組織とは限りません。
管理職がいなくても一定の判断ができ、メンバーが自分の役割を理解し、それぞれが成果へ向かって動ける。
その状態をつくることも、管理職の重要な仕事です。
4.ドラッカーに学ぶマネージャーの役割
ドラッカーのマネジメント思想では、人を単に「管理する対象」として捉えるのではなく、一人ひとりの強みを活かし、組織の成果につなげていくことが重視されています。
ここに、管理職育成を考える重要なヒントがあります。
管理職の仕事は、
「部下を自分の思い通りに動かすこと」ではありません。
一人ひとりの強みを理解し、その強みが組織の目的に向かって発揮される環境をつくることです。
例えば、
Aさんはお客様との関係構築が得意。
Bさんは数字の分析が得意。
Cさんは業務改善が得意。
Dさんは後輩への指導が得意。
全員に同じ能力を求めるのではなく、それぞれの強みを組み合わせてチームとして成果を出す。
これこそ、マネジメントの重要な役割の一つです。
「できないこと」を探して指摘するだけでは、人はなかなか成長しません。
「この人の強みは何か。その強みをどこで活かせるか」
という視点を管理職が持てるかどうかで、組織は大きく変わります。
5.管理職を育てるために経営者が取り組むべき3つのこと
では、管理職を育てるために経営者は何をすればよいのでしょうか。
大きく3つあります。
① 管理職の役割を言語化する
まず、
「当社における管理職とは何か」
を明確にします。
例えば、
管理職とは、会社の方針を理解し、チームの目標を明確にし、メンバーそれぞれの強みを活かしながら組織として成果を生み出す人である。
というように定義します。
完璧な文章である必要はありません。
重要なのは、経営者と管理職の間で認識を共有することです。
② 答えではなく「問い」を渡す
管理職から、
「社長、どうしたらいいでしょうか?」
と聞かれたとき、すぐに答えを教えてしまわないことも大切です。
例えば、
「あなたはどう思う?」
「選択肢は何がある?」
「その方法にはどんなメリットとリスクがある?」
「お客様の立場ならどう考える?」
と問い返してみます。
最初は時間がかかります。
しかし、自分で考え、自分で判断する経験を積まなければ、管理職としての判断力は育ちません。
③ 定期的に振り返る
管理職育成では、
「任せっぱなし」
も、
「細かく口を出しすぎる」
のも適切ではありません。
重要なのは、定期的な振り返りです。
例えば月に一度、
- 今月の成果は何だったか
- うまくいかなかったことは何か
- 部下にどのような変化があったか
- 今困っていることは何か
- 来月何に取り組むのか
を話し合います。
これは単なる進捗確認ではありません。
管理職自身が自分のマネジメントを振り返る機会になります。
6.管理職育成を「本人任せ」にしない仕組みづくり
管理職が育たないと、
「本人にリーダーとしての資質がない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
役割を教えていない。
判断する機会を与えていない。
失敗すると経営者がすぐに介入する。
評価基準もプレイヤー時代と変わらない。
それで、
「管理職として成長してほしい」
と言われても、本人は何をすればよいのか分かりません。
管理職育成は、本人の能力だけの問題ではありません。
組織の仕組みの問題でもあります。
だからこそ、
- 役割を明確にする
- 必要な知識を学ぶ
- 実際に任せる
- 振り返る
- 改善する
- 再び実践する
という育成のサイクルを会社としてつくることが重要です。
7.管理職が変わると、社員の定着にも影響する
管理職育成は、管理職本人だけの問題ではありません。
部下にとって、日常的に最も身近な「会社」は直属の上司だからです。
会社がどれだけ立派な理念を掲げていても、
上司が話を聞かない。
頑張っても認めてもらえない。
仕事を任せてもらえない。
失敗すると責められる。
このような環境では、社員の意欲は低下してしまいます。
反対に、
「自分のことを見てくれている」
「成長する機会を与えてもらえる」
「困ったときに相談できる」
「自分の強みを活かせる」
と感じられる職場では、社員も働く意味を感じやすくなります。
前回の記事「社員が辞める会社の特徴」でも触れたように、人材定着を考えるうえで管理職の存在は非常に重要です。
社員の離職という問題だけを見るのではなく、
「社員が働き続けたいと思えるマネジメントができているか」
という視点から組織を見直してみることも必要ではないでしょうか。
まとめ|管理職を育てることは、組織を育てること
管理職が育たない会社には、いくつかの共通点があります。
- 管理職の役割が明確になっていない
- プレイヤーとしての成果だけを評価している
- 仕事を任せることができない
- 管理職への教育が不足している
- 経営者自身がすべてを決めている
管理職育成というと、
「良い研修を受けさせればいい」
と考えてしまうことがあります。
もちろん、知識を学ぶことも重要です。
しかし、それだけでは管理職は育ちません。
役割を理解し、実際に判断し、人を通じて成果を生み出し、その結果を振り返る。
この経験を繰り返すことで、プレイヤーからマネージャーへ少しずつ変わっていきます。
そして管理職が育てば、経営者一人ですべてを抱える必要もなくなります。
社員が育ち、次のリーダーが生まれ、組織として成果を出せるようになる。
管理職育成とは、単に「課長や部長を教育すること」ではありません。
経営者がいなくても組織が前へ進める仕組みをつくること。
それこそが、会社を次の段階へ成長させるための重要な組織づくりなのです。
管理職・組織づくりにお悩みの経営者の方へ
「管理職に任せたいのに、結局自分が動いている」
「社員はいるが、次のリーダーが育っていない」
「管理職研修をしても現場が変わらない」
こうした問題は、個人の能力だけが原因とは限りません。
役割、評価、権限、コミュニケーション、育成方法など、組織全体の仕組みを見直すことで改善できる場合があります。
オフィスミッドエイトでは、ドラッカーのマネジメント思想をベースに、経営者と一緒に現在の組織課題を整理し、人が育ち、組織として成果を生み出すための仕組みづくりを支援しています。
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「まずは自社の組織のどこに問題があるのか整理したい」
という段階でも構いません。
管理職育成や組織づくりでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。